2つのインタビュー
マリアンヌと、マリアンヌを作った人。
マリアンヌを作った人に聞く
今回のマリアンヌのプロダクツを製作したのは、嬉野肥前吉田焼の陶磁器工房。 これまでの価値観にとらわれることなく、他にはない新しいものづくりに挑戦しているこの窯元では、 約10名の制作スタッフが、生地作りから釉掛け、絵付け、焼成、転写貼りまで 全工程を一貫して行っています。

A=聞き手(トンカチ)
A:製作上ではどんな部分が難しかったでしょうか。
制作に関わってからは、難しい点もいろいろとありました。 日本で作られたものではないので、土や絵の具、釉薬などもまったく同じというわけにはいきません。 マリアンヌさんの作品の良さをできるだけ再現したいと思いながらも、 様々な点で限界があり、それをどこまで超えて再現できるか試行錯誤してきました。
また、手仕事でありながら量産しなければならないので、 手仕事の魅力を失わないように量産するということが難しかったです。
制作前と後では、作品の見え方が明らかに変わりました。
A:その課題をどのように解決されたのでしょうか。
様々なパターンで実験した結果、 素焼きした生地に絵付けをして、その上に釉薬をかけて焼くのではなく、 釉薬の上から絵具をのせることで、あえて滲みを出す方法を取りました。
一本一本わずかにずれる線に合わせて慎重に転写を貼り、 最終的に手描きで仕上げていきます。 やはり手描きでないと出せない表情があります。
今回は半磁器ではなく磁器を採用したことで いい方向に仕上がったとも感じています。
A:特に見てほしいポイントはありますか?
どれか一つというより、シリーズ全体で楽しんでいただきたいですね。 複数のアイテムを、いろいろなシチュエーションで使っていただけたら嬉しいです。
A:作陶する楽しさについて教えてください。
大きく二つあります。
一つは、窯から出す瞬間です。 思い通りにいったときの喜びは格別です。
もう一つは、サンプルをお送りして喜んでいただけたときです。 「頑張ってよかったな」と心から思える瞬間ですね。
マリアンヌに聞く
マリアンヌさんにメールでインタビューをおこなった。 彼女は年末年始を息子や孫たちと過ごしとても元気そうだった。
A:あなたがものを作るときに、第一に考えることはなんでしょうか。
私はいつも、自由に、計画を立てずに作りはじめます。 最初はたいていひどい出来に見えて、 しばらく放置すると、何かが見えてきて、 それをつかんだら、自分の思う方向に向かっていきます。
私は常に「開かれた状態」でいたいの。 でも、最後はやっぱり機能性がとても大事です。
A:.ソルト&ペッパーが「ひとこと」しゃべれるなら何ていうでしょうか?
「おうちにいるわ。」でしょう。
まるで私のノスタルジックな思い出のようにね。
A:バケツの湯呑みが「ひとこと」しゃべれるなら何ていうでしょうか?
「すべての人にバケツを!」
世界のどこへ行っても、バケツはあるわ。 そして、必ず同じようなバケツがあるわ。 バケツは、鉢植えにもなるし、あらゆることに使われる。 実用そのもので、シンプルそのものな存在。 誰にとっても、あなたの人生において、 あなたはあなたのバケツが必要なのよ。
A:今の世の中に、自由とユーモア以外に何が足りないと思いますか?
いつでも足らないのは、イマジネーションとファンタジーね。
A:最近、気になっていることを教えてください。
最近、私は先輩のアーティストであり、 古いタペストリーのコレクターである方に招かれて、 様々な言葉が刺繍されたコレクションを見せてもらいました。それらの多くは、19世紀後半から20世紀初頭のものです。
そこにあるメッセージは、心地よい家を持つこと、 家族や良き友人を大切にすること、 よい食事をすること、人生を楽しむこと、 親切でいること、良い考えを持つこと、 今あるものに満足すること、についてでした。
これこそが「シンプル・ライフ」の本質です。
今日はここまで。どうか体に気をつけて、そして穏やかに過ごしてください。
マリアンヌより
●インタビューを終えて
昨年末にトンカチの事務所が引っ越した。 事務所探しをしていて、この物件に行き当たった。 そこにはなぜか、70センチほど床が下がった レンガの床の天上の高い部屋があった。 これは陶芸のための部屋だと直感して、事務所はここに決まった。
本格的な電気窯をクレーンで運び入れて、 いっぱしの作陶ルームが作られ、 「トンカチ陶芸工房」と名付けた。
この工房が、まずやった仕事は、 私たちを作る側の気持ちに引き寄せたこと。 そして作るという難しさを、日々教えてくれることだ。
まだ、何かを作り出す工房としては稼働していないが、 この部屋は、私たちに向かって、 ある種のメッセージを発してくれる。 それは何物にも代え難いもので、 その存在そのものが、 私たちの精神に多くを与えてくれる。
そう、まるで神社のように。
