イェンニと話す。
2022年7月初旬、トンカチは日本での初個展「渋谷区猿楽町、フィンランドの森」をひかえたイェンニ・トゥオミネンと話しました。
森について
TK:
あなたの作品は森の妖精を連想させます。それは正しい認識ですか。
Jenni:
はい。私は森の中にいるのが好きだし、フィンランドのおとぎ話が好きです。だから、私の作品は森に住んでいます。
TK:
あなたがそれらを森に住まわせたのか、それともそれらは元々森に住んでいたのでしょうか。
Jenni:
森に住んでいたような気がします。
TK:
つまり、森に住まわせるつもりはないんですね。自分たちで勝手にそこにいたのですね。
Jenni:
そう、自分たちで。
TK:
あなたは森の近くで育ったのでしょうか。
Jenni:
私が住んでいるところは、常に森や自然がとても近くにありました。窓の外からすぐ見えるんです。母と一緒によく森に行き、キノコを採っていました。今は夫と一緒に森に行きます。フィンランドでは自然はいつも身近にあります。5分も歩けば、もう森の中です。
TK:
森から遠く離れたところに住んだことはないのですか。
Jenni:
子供の頃、スウェーデンの最南端に住んでいました。家は海のそばでした。
TK:
いつも自然にアクセスできる環境にいたんですね。
Jenni:
はい。(少女が岩の上に座っている陶器を指しながら)この作品は、海から離れて住んでいた頃に作りました。もう一度海に行きたい、長い砂浜を歩いてみたいと思いながら作りました。
TK:
森と海は似ていますか。
Jenni:
はい。海はすごい力があるので、ちょっと怖いのです。森もすごい力を持っています。嵐が来ると木が倒れるかもしれません。どちらもとてつもなく強いのです。
TK:
森にいて怖い思いをしたことはありますか。
Jenni:
風が強くなりすぎたことが何度かありました。嵐が来ると、わくわくすると同時に、とても怖いのです。森の中では人の声が聞こえないので、とても静かです。そこでは自然の声がすべて聞こえます。車や電車の音は聞こえない。まるでシャボン玉の中に住んでいるように感じます。
子供への共感
TK:
その感覚は、子どもの頃からあったものですか。
Jenni:
森の中ではいつもそんな感じでした。
Jenni:
もう1つ思い出しました。小さい頃、母と一緒にキノコを採っていて、母とはぐれてしまいました。当時は携帯電話もなかったので、母の名前を叫ぼうとしたのですが、その時、子供を連れたヘラジカに遭遇しました。お母さんヘラジカは危険を感じたら子供を守るためにとことん戦います。私は気づかれないようにじっと息を殺して、親子が過ぎ去るまで岩陰に隠れていました。
TK:
それは怖い(笑)。あなたの作品は少女性や幼児性そのもののようです。
Jenni:
私は、子どもたちの考える力、話す力に共感しています。私が作品に求めているのは、そういうことなんです。私自身も、まだ幼いような気もしますが(笑)、ある意味、子どもは尊敬の対象です。彼らがどう考え、何ができるのかに、強い興味と憧れがあります。
TK:
普通、人は大人になると子供の頃のことを忘れてしまう。あなたは忘れることなく、そのまま大人になったようです。
Jenni:
はい。私には、子どもたちのありのままの権利を守るために戦う使命があると思っています(笑)。子どもたちには、よい子ども時代を過ごすための時間が必要だと思うのです。ティーンエイジャーになると、想像力の一部が失われます。もっと大人になると、自分の内側にあるものを見せるのが怖くなります。でも、私たちは皆、自分の中の子どもがずっと必要なのです。
TK:
あなたは子供らしさを保とうと努力したのですか。
Jenni:
いいえ。私は子供のように強い感情を自分の中に持っています。それはいつも自分の中心に存在しています。私は、とても喜んだり、怒ったり、冷静になったり、悲しんだりします。大人が隠そうとするような、さまざまな感情を私は持っていて、それを表に出すのです。
大人はわかってくれない
TK:
自分の気持ちを隠す大人にはなりたくないと思ったのはいつですか。
Jenni:
大人になるにつれて少しずつです。友だちや多くの大人の行動を観察すると、強い感情を表に出したがらないと気づいたのです。
TK:
自分の気持ちを全部出そうと思ったとき、解放感や自由を感じたのでしょうか。
Jenni:
はい。
TK:
それで、あなたは大人をやめることにしたのですか。
Jenni:
いいえ、そんなことは考えませんでした。ただ自分らしくいようとしたのです。自然にそうなったのです。
TK:
子供の頃に作ったものと、今あなたが作っている作品に関連はありますか。
Jenni:
たくさんの馬とポニーを作っている点は同じです。大好きなんです。私が知っている動物の中で一番美しいものです。彼らの動きは夢のようで、私はいつも幸せを感じます。
マリメッコと出会う
TK:
あなたのキャリアはマリメッコのコンペティションで優勝したことが出発点でした。あなたにとってマリメッコのデザイナーになることにはどんな意味があったのでしょうか。
※マリメッコはヨーロッパを代表するアパレル企業である。
Jenni:
マリメッコと仕事をするのはずっと夢でした。コンペティションの告知を見たとき、これは私の出番だと思いました。マリメッコと仕事をするようになってから、彼らは私に多くの自由を与えてくれました。とても光栄なことでした。
TK:
あなたの作品はすごく自然な欲求で作られているように見えます。
Jenni:
創作をしているときは、自分が何をしているかなんて考えません。ただ、やるだけです。陶芸をするときは、粘土の塊を手に取って、それを形にするだけです。ポニーを作ろうとか、女の子を作ろうとか、そういうことは一切考えません。ただ、自然とそうなります。
TK:
作るべきものを先に考えると、作品に変化が出ますか。
Jenni:
少しだけ。ある人から正確に同じ作品を作ってほしいとオファーがありました。私は同じものを作ることはできないのです。私が作るすべての作品は互いに違っています。もし私が絵を描いているときに、誰かが何かを正確にコピーするように頼んだら、それはもう終わりです。創作とは違うものになってしまいます。
TK:
陶芸の何が好きですか。
Jenni:
形を作ること、つまり形を求めることが好きです。粘土は素晴らしい素材で、自分の感情をそこに練り込むことができます。
あなたは誰?
TK:
どんな子供でしたか。
Jenni:
私は南スウェーデンで生まれ6歳のときにフィンランドに引っ越しました。活発で、幸せな子どもでした。小さいころはコペンハーゲンによく行きました。海にもよく行きました。長い砂浜が好きでした。その後、美術に興味を持ち、ヘルシンキに移りアートとデザインの勉強を始めました。
TK:
美大に進もうと思ったきっかけは。
Jenni:
他に選択肢がなかったんです(笑)。 他のキャリアには全く興味がなかったのです。
TK:
思春期にもっとも影響を受けたものは何ですか。
Jenni:
一番好きだったのはMTVです(笑)。よく見ていました。音楽がとても好きでした。その後、夫のJukka(ユッカ)と出会い、20年一緒に暮らしています。
※MTV(エムティーヴィー)は、1981年に開局したアメリカのケーブルチャンネルである。24時間ポピュラー音楽のビデオクリップを流し続ける音楽専門チャンネルとして誕生し、音楽番組の代名詞的存在となった。
TK:
ということは、人生で一番影響を受けたのはMTVとご主人のJukka(ユッカ)さんということになりますね(笑)。
Jenni:
はい。10代のころはMTVで、その後、Jukka(ユッカ)になりました(笑)。ダンスも好きでした。倉庫でやるテクノ系のパーティによく行ってました。
TK:
あなたのことをもっと知りたいです。好きなことは何ですか。
Jenni:
私はとてもポジティブな人間です。人をハッピーにしたいと思っています。自分の幸せを他の人にも広げたいのです。私は完璧主義者なので、自分に厳しいときもあります。絵を描いていても、「うまく描けない」と思ってしまいます。今は、1年間で1000枚の絵を描いています。スケッチブックを持って、毎日絵を描いています。美大にいた頃は自分の絵が好きではなかったけど、今は自分の絵が好きです。このスケッチブックは、進歩が目に見えるのでとてもいいのです。私は常に仕事をしていますが、ガーデニングも大好きです。時々、何も考えずにどこかに行くのも好きです。穏やかな気持ちになるのが好きなのです。
TK:
夏休みはどのように過ごしていますか。
Jenni:
ガーデニングとフリーマーケット、泳ぎに行くのも好きです。毎日2回は泳いでいます。 そして、自転車に乗ったり、アイスクリームを食べたり。
TK:
子供のようですね(笑)。
Jenni:
はい(笑)。
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イェンニ・トゥオミネンの個展『渋谷区猿楽町、フィンランドの森。』
会期:2022年7月22日(金)〜8月28日(日)
開廊時間:12〜19時(予約制)
休廊日:月・火曜
会場:のこぎり 〒150-0033東京都渋谷区猿楽町5-17第一西尾ビル2階
https://www.nokogiribytonkachi.jp/
イェンニの妖精の森SHOP ONLINE SHOP
https://tonkachi.co.jp/special/jenni_feature/