マリアンヌにお酒について聞いてみた。
2022年7月下旬、お酒のことからはじまって、いろいろ脱線しながら話しました。
大酒飲みのスウェーデン。
T:あなたの酒器「マリアンヌのおさけのどうぐ」が発売されます。そこで今日は、お酒にまつわる話を聞かせてください。
M:スウェーデンでは歴史的に、人々はよくお酒を飲んでいました。大酒飲みの国だったのです。何百年も前に遡ると、お金ではなく、お酒で給料をもらっていた人もいるくらいです。でも今の若い世代はお酒を飲みません。私はその中間の世代です。私の友人の何人かは決してお酒を飲みませんが、私はおいしいお酒を飲みたい人です。美味しいワインが大好きなんです。おいしい食事とおいしいお酒を楽しむことは、本当に素晴らしいことです。私は何年もずっと自家製ワインも造っていて、これは私の大事な趣味のひとつになっています。ワイン作りは面白いですよ。なるようにしかならないのです。時にはすごく美味しいものが出来たりします。
T:お酒にまつわる悪い思い出を教えてください。
M:嫌な思い出ならいくらでもあります。若い時は、どう反応していいかわからないものです。お酒で一番嫌な思いをしたのは、息子が初めてお酒を飲んだ時です。夜中に知らない人から電話がかかってきて、私は完全に気を失っている彼を家まで運ばなければなりませんでした。この経験は本当に最悪で、長い間、ず~っと彼に腹を立てていました。今や彼はほとんど飲まず、トレーニングと健康維持に夢中ですけど。
T:そうですね、今はジムに通う人が多く、お酒を飲む人が少ないですね。
M:そして、誰もタバコを吸わない。
T:そうですね。
M:私が子どもの頃は、みんなタバコを吸っていました。当時はタバコを吸うのは健康的だと言われていたくらいです。私の母は小さな病院で働いていましたけど、皆がそこら中でタバコを吸っていました。とても自然なことでした。
私は感性の依存症。
T:タバコを吸ったり、お酒を飲んだりするのはごく自然なことだったのに、どうして変わってしまったんでしょう。私は不思議に思っているんです。
M:今は、そーいうことが、その人の属するクラス(階級)の目印になると考えられているからでしょう。健康であること、痩せていること。それらも含めて今やファッションなんです。でも、ある意味で、健康であることと、トレーニングで得られる充足感は、かつてのタバコやお酒と同じ感覚をもたらせていますよね。
T:ネイティブアメリカンはタバコを吸うことで、人生の充足感を得ていたのだから、それが不健康なわけがないだろう、という考えもあります。お酒もタバコも、生活の中で過剰に摂取するのでなく、ヒーリング的な効果がある範囲で付き合えばスバラシイものだという考えです。
M:その通りだと思います。
T:お酒にまつわるいい思い出はありますか。
M:今週は工房の友達と一緒でした。彼女はとても料理が上手で、おいしいワインが大好きなんです。彼女が持ってきたイタリアワインはとても素晴らしかった。おいしいワインと一緒に食べる食事は格別です。何年も前のことなのに、いまだにその感覚が口の中に蘇ります。それは一生の思い出と言えるものになるのです。それはとても官能的で、私にとっては特別なものです。
T:おいしい料理とおいしいお酒が一緒になると最強です。それは生きていることへのご褒美のようなものですね。
特に飲み物は身体への吸収が早いので、私たちはお酒がダイレクトに生命に潤いを与えている感覚を感じることができます。
M:それは究極の楽しみですね。その瞬間があるとき、私たちは神にかなり近づいているのです。それが私です。私はよく、私に心臓はない、胃袋があるだけだと言っていました。私にとって、それは重要なことです。私は感覚的な人間なんです。強い感覚を感じる瞬間が好きなんです。私は感性の依存症です。
捨てることと遺伝子。
T:今、トレンドになっているのは、体に悪いものを排除することです。このトレンドについてどう思われますか。
M:自然に害を与えることも含めて、やりすぎは危険です。どうせ死ぬんだから、生きている間に気持ちよく、強くなることはいいことです。でも、すごく健康でも病気になる。そしていずれ死ぬ。すべての流行は、やりすぎることで逆効果になって、私たちはそれに殺されます。例えば、ヨガを毎日やろうと思っても、やりすぎたら腰が痛くなったり。
T:歳をとると、いろいろなことに優先順位がつけるしかなくなる。それで悪癖を辞めちゃうんですよね。
M:歳をとると、そういうことがありますね。物を捨てなければならないのです。
T:私の同僚のお父さんが先日亡くなったとき、彼は生前、病気になりながら、タバコもお酒も全くやめなかったんです。最後までタバコを楽しみお酒を楽しんでいました。家族は皆、好きなように生きてよかったねと言っていました。
M:私にも、とても仲の良い友人がいるけど、彼女はタバコとお酒をやめることはないでしょう。彼女はただ人生を楽しむでしょう。人は自分の好きなように人生を楽しむことが大切です。
T:病気について何か意見はありますか。
M:すべてはどのような遺伝子をもっているかだと思うのです。
T:その意味では病気や健康のことは、気にしすぎるのはよくないかもしれませんね。
M:少しね。健康に対して良い態度を保つことが重要ですね。人生は楽しむためにある。罰ではなく、喜びなのです。
T:最近、お酒やタバコは悪者扱いされています。私はそれが過剰だと思うのです。
M:何でもそうです。何でも罵倒されるのです。でも、何に対してもリラックスした態度で接することができるといいうこと自体も、遺伝子が決めるのです。依存症になりやすい人もいますし、ならない人もいます。
T:そして、誰かが何かを罵倒し、私がそれに怒れば、それもリラックスした態度ではなくなるわけですね。何事もやりすぎはいけない。
M:ぐるぐるまわるけど、そうですね。
ユーモアの楽しみ。
T:私はお酒をあまり飲まなくなりました。でもやっぱり、おいしい料理とおいしいお酒は一番だと思っています。それがこの酒器を作りたかった理由です。この酒器を作ることで、人生の最高の瞬間の一部でありたいと思ったのです。
M:その通りですね。それには大きさが重要です。この酒器も大きすぎないのがいいのです。
T:そうですね。そして、このサイズでも十分酔っ払えます。
酒器は真面目なものが多くて、あまりユーモアがないんです。だから、ユーモアのあるものを作りたかったんです。
M:ええ、ユーモアも楽しみの一つですね。
Y:真面目な酒器とユーモラスな酒器では、お酒の味が変わるかどうか試したかったんです。
M:きっと大きな違いがあるはずです。私にとっては、グラスがどんなものであるかが重要です。(自分のグラスを見せながら)これは今、ウォーターグラスとして使っていますが、古いウイスキー用のグラスです。私の父はウイスキーとソーダを入れて飲んでました。グラスはたくさん持っています。何をどれで飲むかはとても重要なことなのです。
T:これが日本のお酒の場に出ていくことを想像すると楽しくなります。
M:そうですね。人生の楽しみに関われることは嬉しいことです。
お酒についてみんなに聞いてみた。
わがスタッフにお酒について聞いてみました。
Q1:あなたとお酒はどんな付き合い方ですか。
よく、お酒にいじめられています。
特別な時の特別な関係です。
前は熱愛関係、やがて腐れ縁、今は別居中。
なくてもいいけど、あるとちょっと楽しいかも。
Q2:楽しかったお酒の思い出を教えてください。
息子が二十歳になって乾杯した。息子は全然酔わないのに、旦那の方が嬉しそうに酔っていた。
卒業旅行の金沢で美味しい日本酒を飲んだ。一番飲みたがっていた友だちがすぐ寝ちゃったけど、みんなの寝顔をいっぱい撮った。
友達たちと汚い墨田川を見ながら、朝までくだらない話をする。
私はお酒に酔うと踊り出します。公園の木と踊り狂ったのは今では伝説です。
お酒の席の謎の議論が大好きです。
20歳の誕生日の日、堂々とコンビニで缶ビールを買って飲みながら帰った。オレンジジュースの方が美味しいなぁと思いながら、晴れ晴れした気分だった。
仕事が遅くなって、終電が終わってからよく飲んだ。睡眠を削って飲んでたけど、あの頃は楽しかった。
Q3:お酒で失敗したエピソードがあったら教えてください。
雰囲気に酔って一人で喋りまくって、すっごく偉そうにしてた私!やめてー!
23歳くらいだったかな。友達と飲み過ぎて六本木に靴を忘れて帰った。
お酒を飲むと眠くなるので、起きた時はいつも、介抱する係です。
飲み会はたいてい、携帯の破損と紛失がセットです。
Q4:お酒は何に似てると思いますか。
太陽。
映画。
真剣な無駄話。
洋服。
絵。
ゲーム。
はしご。
音楽。
香り。
景色。
子守唄。
Q5:もし「マリアンヌのおさけのどうぐ」に力があったら何をしてほしいですか。
私が小学生の時に亡くなった祖母とお酒を飲みたい。お酒が好きな人だったから。
1杯飲んだ人のオーラが、ぽわっと出てくる。
その場にいる人達みんな、親戚になれる。
自分のエゴを消してくれる。
ふたつのお猪口で、ふたりが結ばれる。
もう、お酒だって飲めるんですよ、と言ったあの人に会わせてほしい。
Q6:お酒について言いたいことあれば、何でも言ってください。
小さい頃はお酒がすごく怖いものでした。
お酒をあまり飲まなくなったら、人生から少なからず陽気な時間がなくなった。
いつか、私にも、本当に、娘と飲む日が来るのだろうか。
多分一生離れられない。
実は今も、オレンジジュースの方が美味しいと思っています。
親の前で飲むのはなんだか恥ずかしい。
ひとりでは飲まないですけどね。
もう無茶はさせないでね〜。
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