萩焼のリサ猫が出来るまで

今回、「にっぽんのリサ猫(七番、萩)小雪」を制作した窯元「萩陶苑」は、海と山に囲まれた山口県萩市にあり、2代目の元ですべての工程を一貫して手掛けている。窯元の i さんに、今回のリサ猫「小雪」についてお話を聞いた。

そのまんまとの共存

萩焼は、色や絵を、ほとんど使わない。
その代わりに、土と釉薬の配合、使う道具の選択、焼成方法を変化させることで、限りなく「そのまんまの自然」を尊重しながら、人の手になる世界を作りだしていく。このものづくりの思想は多くの人々に影響を与えてきた。

「土、釉薬、焼成の組み合わせによって、自然でやわらかく、やさしい風合いが生まれます。どの要素が欠けてもそれはできません。」

そして萩焼らしい自然でやさしい風合には、「自然」そのものが持っている強烈な強さもある。それが萩焼の大きな魅力となっている。

茶室と野良猫

今回のリサ猫では、その“萩焼らしさ”をどのように表現したのだろうか。

「縮れ模様が特徴の『かいらぎ』で仕上げたことで、ぽってりとした立体感とぬくもりを表現できたと思います。」

茶の湯の世界で愛された『かいらぎ』の質感が、猫の身体に自然に重なり、茶室に出入りする優雅な野良猫の姿が重なる。

※ かいらぎとは、萩焼の代表的な表情のひとつ。 釉薬が焼成時に縮れることで生まれる独特の凹凸が特徴で、 土と炎の作用が強く現れるため、ひとつとして同じ景色になりません。 茶碗をはじめ、茶の湯の世界で特に愛されてきました。

「もこもこ」

制作の中で特に難しかったのは、リサ猫のよさを保ちながら、同時に萩焼ならではのよさをしっかりと表現することだった。

使用しているのは、一般的な萩焼の土と、土灰や長石、ワラ灰などを調合した釉薬。
今回のリサ猫では、その釉薬を二種類重ね掛けしている。

「二つ目の釉薬を吹き付けることで、猫の毛の『もこもこ』とした可愛らしさを表現できました。」

同じ釉薬を使っていても、掛け方や濃度の違いで仕上がりはまったく変わる。
その微妙な調整と試行錯誤が、今回のリサ猫の表情を形づくっている。

一方で、思い通りにいかなかったこともあった。

「焼成したときに、顔が釉薬と一緒に溶けてしまい、見えなくなってしまったことがありました。」

小さなサイズだからこそ、わずかな違いが結果に大きく影響する。想定外は常に制作の一部だった。

どこかに行っちゃいそうな猫

完成したリサ猫を見たときの気持ちを聞いた。

「おぉ~、可愛いな、という気持ちです。いまにも動き出しそうな、生きている感じがしました。」

手に取る人にぜひ見てほしいポイントとして挙げてくれたのは、個体ごとの違いだ。

「体型も、釉薬の掛かり具合や溶け具合、重さも、ひとつひとつ微妙に違います。
あなたが手にしたリサ猫は、たった一つの猫です。」

正面から、後ろ姿から、時には転がしてお腹が見えるように置いてみる。角度を変えるたびに違う表情が見えてくる。

かたちが変われば、すべてが変わる

今回のプロジェクトを通じて感じたのは、同じ萩焼でも、リサ・ラーソンの形になれば印象が大きく変わるということだった。

「実際に作ってみて初めて気づくことがたくさんありました。」

これからもさまざまな実験を繰り返しながら、萩焼は人と共に進化する。
静かな土と釉薬が生み出した、もっとも自然に近い小さな猫「にっぽんのリサ猫(七番、萩)小雪」を、ここだから生まれた、たった一つの猫なのです。

▶︎ 商品詳細はこちら

"Lisa's Cats On the Road"
「にっぽんのリサ猫」の旅は、これからも続きます。乞うご期待!