トンカチ立ち上げたメンバーのSとK(ササカツと呼ばれること多し!)に干支シリーズについて聞きました。干支企画の構想から12年を振り返りつつ、まだ語られてない今思い出したエピソードを初公開!インタビューはおなじみ突撃新人(もう新人ではないぞ~!)のMが担当しました。
12年間という長丁場のプロジェクトがついに終わろうとしています。今の心境をずばりどうぞ!
K: 12年!気づいたら12年・・!という感じです。
S: ほんとうにそうですね。
Q1 :干支の企画が生まれた瞬間のことって覚えてますか?
K: 普通に企画会議でしたね。事務所で話をしたと思う。
O(何故か呼んでないのに座って参加している): これはさ、トンカチって2012年に独立しているけど、何もしてなかったので、そろそろなんかやらないといけないって時期だったんだよ。それで無理やり考えたんじゃない。
S: リサが、もともと干支とか星座とかそういうのが好きというのも知ってたし。干支の話をしたこともあったから、それでダーラナの馬っていうスウェーデンの民芸品があるじゃんという。色々なことが重なってだね。
O: 始まった時は誰も、これを12年続けて干支を制覇しようなんて思ってもなかったんだよね。12年何かを続けるって、到底無理だよね。当時の我々には永遠に近いことだから。2年3年の話じゃないから。あとは一気に出さずに一年ずつ出したっていうのは、いろいろな都合もあったよね。単純に制作体制とか制作費とかな。
K: うん。当時はすこしじれったいとこもあったけど、今となっては一気に作らず、1つずつ作っていったことで、時代の空気も入ってきたのが良かった。
S: サイズとか細かなテイストとかはバラバラなんだよね。うしとか、大きいなぁ。
M: でも全部揃った時にちゃんと一つのものって感じがして、おさまりがいいですよね。
Q2:ダーラナの馬を作ってもらった時のことを教えてください。このころも、手紙でのやり取りだったのでしょうか?
K: この時はもうメールだったね。原型は、スウェーデンから小包で届いた。
S: 馬のときは、3種くらい原型があったかな。色々リサがアイデアを出してくれた気がする。お尻の感じとか結構リサとやり取りして。リサの原型と波佐見焼の試作を並べて、いろいろな角度から目で見て比べたり。このお尻のハリ感違うけど?みたいなやりとりを何度もしましたね。後からは写真での監修になったけど、当時は試作品が何度も行き来していました。最初の馬は特に慎重でしたね。
Q3:リサは日本の干支について知識があったとき聞きましたが。
S: 干支についての本も持っていたんだよね。リサは神話とか、星座とか、伝説とか、そういうのが好きだったからね。ユニークピースで星座の動物たちのチェスのコマとかつくってたし。
K: 私たち牡牛をもらいましたよね。
Q4:リサの干支がスタートした当時はこのような現代的な干支のお飾りはなかったし、一般の家庭や若い人が干支の置物を飾る習慣もなかったのではないでしょうか。当時私は子供ですけど見たことなかったです。
K: そうですね。私達もその時はあまり意識してはいませんでしたが、今思えば、その走りだったと思います。
O: よっ!仕掛け人!
K: 当時(12年前)はやっぱり、干支の置物っていうと、ちりめんだったり木彫りだったり。そういうものが主流だった。
S: 今みたいに日本の民芸とデザイン雑貨やインテリアの感覚が融合したようなものはなかった。でも、リサの干支は、北欧とはっきりわかるテイストが干支の中に融合されていて、それが新しかったと思う。
Q5:リサの干支がここまで広がった理由はなんだと思いますか?
K: やっぱり、白地に青のこのデザインかな。和の要素と、北欧の要素がとても良く合わさっていると思います。
M: 最初の馬が爆発的に売れた!とかいうわけではないんですね。
K: そうだね。売れたけど、すっごく売れたわけでも売ろうとしたわけでもなかった。大ヒットしたから次も!となったわけではなく、羊も、確かギリギリになって、やっぱかわいいからやろう!と決めてやったよね。
O: 干支っていつもどのくらいから動いてるんだっけ?
S: ほぼ1年前からですよね。12月くらいには、その次の年の干支の原型をリサに頼んで。でもうさぎのときは、なかなかできなくて、結局はもともとあったうさぎのキーホルダーの原型をベースにして。水玉模様だったんだよね最初は。それを、リサにリクエストして柄を考えてもらって、草の模様になった。そしたら、一気に北欧デザインだもん!そして、草むらにうさぎがいる風景が浮かぶよね。すごい。リサの力を見たよね。
Q6:干支それぞれのことを振り返りながら、何か思い出すエピソードがあれば教えてください。
S: ひつじのくるくるが出てきた時は、本当にすごいと思ったな~。やっぱり、すごい。シンプルで完璧。
S:あとは、「こいのとり」の風車みたいなマークとか。ああ。こういうの、なんでここにこの模様を入れたのとか、もっとリサに聞いておけば良かった。このてんてんは、テクラ(鳥の陶器)の名残みたいなのもあったりね。
あと、「ししとうり」もすごい。元々は子供と親と別にしようとしてたのに、1つに入れちゃうなんて!そして、お花柄。おめでたすぎるよー!みたいになってる。みんなの「いのしし」へのイメージがガラッと変わったよね。それもすごいなと思った。
やっぱりリサがつくると、まあるくなる。なんかかわいいよねこの丸さ。
M: 私は「ししとうり」のエピソードが大好きです。Sさんがこの前言っていた…
S: そうそう。リサに初めて会った年に、スカンセンの動物園に行った時の話だよね。雪が降っていたから園内は薄暗~くて。で、そこにいたある猪が、私たちを威嚇してきたの。こわっ!という感じで。その時、110カメラとかで撮影していたからかも。なんかその猪のことが印象に残っていて。
で、あたたかい時期にまた、その動物園に行ったら、なんとその子と再会して!しかも、小さいうりぼう数匹と一緒にいたんだよね。わーー。あの猪だー。と盛り上がりました。
そのあとイノシシを作るときに、このエピソードをリサにも話して、ウリ坊も作って欲しいとお願いしました。
そしたら、もう1体作るのではなくて、ピッタリお母さんに寄り添ったイノシシが上がってきて、本当にすごかったな。
K: くさぶえの牛は、もともとリサのビンテージの牛が何かを咥えていたから、この子にも咥えさせたいって話になって、で、幸運を運ぶクローバーにしたんだよね。
S: せっせとねずみは、この手が、佇まいがリサみたいだし。
まって、全部をぐるりとならべたい。(丸椅子にぐるりと干支を並べる)
K: 私は、「おもうさる」で目が難しかった記憶がある。やっぱりどの子も目が難しくて。ちょっと違うだけで全然印象が変わっちゃう。原型が手書きだったりするからこれも結構苦戦しましたよね。「とりをみるいぬ」も黒目のバランスが難しくて。黒目を目のアウトラインのどこまでつけるかとか。
リサは原型にそのまま絵を描いてくれていて、量産化するときには少し調整が必要でした。その原型をそのままコピーするというのは難しかったですね。
体の模様部分のグラデーションとか、あとは水色の部分とかも結構色々悩みましたね。(くさぶえのうしのクローバーは水色)「おもうさる」は、この猫背の感じが出したいのに、でも最初は姿勢のいいサルになってて。
M: たしかに。こうしてみると目の印象が全然違う。作画が全く一緒というわけではないのに統一感があるのがすごいですね。
S: あとは銅板転写のシートの貼り方にもこだわりました。やっぱり量産する現場がやりづらくないように工夫をしましたね。羊のフアレンは、胸のこの感じ(胸をぷんと張っている感じ)がすごい出てていいですよね。
M: 転写シートの絵柄は、どうやって起こしてたんですか?
S: スケッチをこっちでトレースして、それをデータにしたから結構大変だったのよ。ダーラナの馬は、余白を大きくとりたかったので、本当にこれでいいのか細かいところまでリサと話し合った。
O: あの馬は最初だったので、リサも私達も量産する工房も関係者全員が緊張感が強かった。
O: 結果的には、干支が我々の年中行事になったのがよかったよね。意図したわけではないけど、うまく、1年にサイクルができた。我々にとっての寅さん映画になった。これがなければ年が越せないっていうね。
S: あとは、途中からさ、トラだったら「1つじゃなくて対にしたいよ」ってリクエストしたり、勝手なストーリーも考えて、リサと話していいねってなったりして。干支に対する関わり方が変化していった。うさぎは子だくさんだから子ウサギをつけようとかね。これはリサの体調もあって二年で終わっちゃったけどね。
K: 唯一もめたのが、そのあとのドラゴンでしたね。リサのこどもたちも総出でいろいろ話し合った。でも今思うとそれもいい思い出ですね。
S: 最後の蛇は、最初の案は「コブラ」だったんだけど、私はそれがすごく好きだった。そうくるか!と思ったし。コブラって、ツボから出てくるシーンが描かれたりするじゃないですか。それが、リサの陶芸にもつながる!と思って。ツボから出てくるコブラ、つくりたいなあ。
K: 十二年後とかにね。(笑)
O: 当時、始めたときは12年やるぞって言いながらも、誰も12年やるなんて思ってないわけよね。「50になっても一緒に働いてね」みたいな話と一緒で、12年って永遠のようだったから誰も本当の話にしてなかった。笑い話みたいにとらえていたんだよね。でも、じゃあ次、その次、とやってたらいつの間にか本当になっちゃったっていう。もしかして12年を達成できるかもって思ったのってずいぶん後でしょ?
K: 本当そうですね。トラあたりからかな。皆が意識して焦ってきてたね。
S: でも、あんまりリサにプレッシャーかけるのはよくない!ってなったりね。
O: できなくてもいいや。って気持ちでもあったよね。完結しないかなという気持ちもありながら、でも、待っていた。
S: いろいろ、もっとやりたかったな。13年目の馬ではさ、どうするって一緒に考えたかったな。走る馬、とかね。でも、しょうがないね。
O: 晩年のリサとの関係っていうのは、干支があったから一緒に作るという作業が続いたよね。これがなかったら、多分そういう関係は続いてなかったかもしれない。
S: 見せたかったね、リサに。今思えば(十二支そろった姿を)見てないんだね、リサは。
O:それがいいんだよ。
S: きっと見てたら、「このときのこれはやりなおしたい」とか絶対言うよね。
K: 「なにこれ」とか!
S: いつものながれだね!
Q7:波佐見で作ろうと思ったのはなぜですか?色々な窯元さんとその当時もつながりはあったと思うのですが。
K: まねくねこを作っていたからですよね。リサも波佐見を気に入ってて信頼してた。特にリクエストしてないけど、リサが最初に上げてきた試作は、青と白で作ってきたので、最初から波佐見を意識してたんじゃないかなあ。
O:そのころのリサはスウェーデンで作れるものと違うことをやりたいと強く思っていたからね。
Q8:ネーミングについて。やっぱりリサの干支のポイントは名前にあると思うのですが、どのようにして決まるのでしょうか。
K: リサから原型がきてから名前を考えましたよね。
S: 干支の意味と、原型と、それをみて決めたね。
O: 日本の干支の通常のセオリーに乗らないで、何か別のことで意味や名前をつけようってなったんだよね。自分たちにとっても名前が重要で、言いたいことをそこに込めていって、それがエスカレートしていったんだよね。
Q9:ここからまた新しい12年がはじまりますが、今こんなことをしたいなとか、妄想していることはありますか?
O: またこれからの十二年っていうのは、永遠みたいなものだから、やっぱり、一年一年ですよね。
K: 今回つくった箸置きがかわいかったから、何かやりたいですよね。
S: ああ、リサがこれ(十二支そろった景色)をみてないなんてぇ。
K: でも、リサは作ったときに、わかってるから。(これ、リサの名言!)
S: そうだ。リサはいつもわかってるからね。
アフタートーク
O: でもさ、これってやってよかったよね。1年1年地道に続けて本当によかったよね。
S: リサも干支を目標みたいにしてたし。
O: これからも、行事であり続けるよね。我々にとって。人が一人で心で決めても頑張れないスパンだよ、12年ってさ。なかなかないことだからね。
S: リサはどれが好きだったかな。そんなの聞かなかったね。それぞれいいね。私はこれかな。(くさぶえのうしを見て)あれ、これって口なかったっけ?
K: くちなくしましたよ!色も、結構直しました。水色にするかとか。
S: いやあ、これ、転写シートはるひとはすごいですよ。全部手作りで、こんな細かいパーツまで!なにこれ~~(ししとうりの足)
O: これ12年作ってた人がいるんだもんね。
K: こんな干支シリーズ、ないですよね。
O: リサが作ると、やっぱり上品にまとまるね。
S: こんなに小さくても、いろいろなことを表してるもんね。
O: 最初に原型がでてきて、それぞれが色々なことを思うけど、最終的には全員が気に入るんだよね。そういうふうにみんなまとまる。どれもこれも、最終的にはみんな可愛いで一致する。
S:モギさんはどれが好きなの?
M: 私は「ひかりのうさぎ」です。自分の干支だしトンカチに入った年にできた干支で、そしてひかりちゃん(実は当時毎日事務所に来てた赤ちゃんの名前)。サイトも担当したし!
S : そして最後がこの蛇だもんね!このかお!
K: いまとなっては超かわいらしい。このかんじで最後なのが、面白い。
S:くるくるまわってるし!
K:そうだね。みんな、かわいい。
O: てなことで。
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