アレッサンドラと話す。
イタリアのガラスデザイナー、アレッサンドラ・バルデレスキに話を聞いた。
TK:
あなたはどのように育ったのですか。
AB:
イタリア北西部のピエモンテ州にあるモンフェッラートという山のある田舎で育ちました。3人姉弟の一番上。大自然の中で、弟たちと毎日遊んでいました。私は内気で臆病な子で、絵を描くことと本を読むことが好きでした。おばあちゃんも一緒に住んでいて、いつも私達を守ってくれました。父は宝飾品業界、母は精密機械業界で共に起業していたので、彼らは、自分の道を切り開き、粘り強く夢を追いかけることを教えてくれました。
TK:
その頃の思い出を教えてください。
AB:
家族のみんな自転車で畑に行って果物狩りをした日々。そして、いつも私を取り囲んでいた、おびただしい量の「緑色」です。私はまさに、緑にまみれて育ったのです。
TK:
どのような契機でアーティストになったのでしょう。
AB:
私がアーティストになったのは、祖母の影響が強かったと思います。祖母は私に本を読むことを教えてくれましたが、「絵は邪魔だから」と絵のない本しか与えませんでした。表紙に1枚だけしか絵がないような本です。だから、幼少の頃から好きな物語には自分で挿絵を描いていました。主人公を想像して顔を描き、様々な場面を想像して絵にしていたのです。今思うと、これは想像して表現をするということの訓練になりました。
TK:
作品のインスピレーションはどこから得ているのですか。
AB:
2つあります。1つはおとぎ話です。「モノ」は物語を語るものです。私は古典的なおとぎ話から様々なアイデアを得ています。おとぎ話は、平凡な日常から美と驚きを引き出す手段です。もう1つは自然です。自然は私に、形、色、構図を教えてくれます。自然は安心を与えてくれる存在であり、工夫され尽くした存在であり、絶対的に必要な存在です。それは、世界に個性を与えながらも、押しつけず、攻撃的でもありません。それらは「サイン」のようなもので、多くのインスピレーションを与えながらも過剰にならないのです。自然は常に適量なエネルギーだけを、私たちに与えてくれます。
TK:
どうして植物や動物をガラスの中に入れようと思ったのですか。
(※彼女はグラスの中にオブジェが入った作品で知られる。)
AB:
思いもよらないところに、思いもよらないものを入れて人を驚かせるのが好きなんです。それは私のトレードマークになりました。
TK:
作品作りの工程を教えてください。
AB:
まず、すぐに色鉛筆や水彩絵の具でたくさん絵を描き始めます。最初は技術的な限界などは無視して、想像力の赴くまま自由に描きます。その後、現実的に検討して、ドローイングを修正し、細部を調整していきます。
私の作品にとって色はとても重要な要素なので、下絵の段階で私が考えているストーリーを伝えるために必要な色をすべて出します。時には奇抜な色も。でも、私が欲しい色がガラスの世界でいつも手に入るとは限らないので、小さな妥協を受け入れることもあります。でも、最初に提案した色を全く変えることはありません。最初のインスピレーションに忠実であることが、何より重要なのです。
最初のドローイングから最終的な形になるまで、約半年かかります。手書きで描いた後、3Dモデリングで精緻化し、アイデアの実現可能性と快適さを検証します。この後、色、寸法、構造の詳細を記したさまざまなファイルが作成され、私の意図をガラス職人に伝えます。最初のプロトタイプができあがると、ディテールを修正して、2つ目、時には3つ目のプロトタイプへと進みます。そして、満足な結果が得られたら、量産に進みます。
TK:
サボテンのどんなところが好きですか?
(※サボテンのオブジェが入ったグラスは特に人気が高い)
AB:
サボテンは未知の惑星から来た生き物のようです。他の植物とは形も色も発達の仕方もまるっきり違っています。サボテンをデザインする時は、未知の島で未知の生物を発見する探検家になった気分です。
TK:
自然とガラスという素材の関係について
AB:
吹きガラスは、植物の成長や宇宙の進化のようです。自然の要素は常に吹きガラスの巨匠たちのインスピレーションの源となってきました。私は、ナポレオーネ・マルティヌッツィ、パオロ・ヴェニーニ、エルコレ・バロヴィエ、フルヴィオ・ビアンコニなど、ムラーノガラスを代表する巨匠たちのことをすぐに思い浮かべます。
TK:
自然と人間との違いは何でしょうか?
AB:
自然は私たち人間を必要としませんが、私たち人間は自然がなければ想像も創造もできません。
TK:
ガラスという素材のどこが好きですか?
AB:
透明性、予測不可能性、偶然性、それらは子供の頃に戻ったような気持ちにさせてくれます。
ガラスは流動的で変化しやすく、透明な色は無限に混ざり合い、太陽の光で輝きます。ガラスは強い感情的インパクトを持つ不思議なオブジェを作るのに最適化されています。
TK:
あなたと日本との関係について教えてください。
AB:
私はトリノのアカデミーで美術を学び、その後、ミラノのドムスアカデミーの工業デザイン科で学んでいました。その時、日本の岐阜県でレジデンスをする機会を得ました。この経験が私にどのような影響を与えたか、何年も経ってから気づくことになりました。
一言でまとめると、日本では、美しさを実現するために、優しさをもって創造します。また、身の回りのものがすべて丁寧に作られています。おそらく、この経験が私に大きな影響を与えたために、私の作品のどこかが変化し、今では日本の人々が私の作品に日本的な何かを発見してくれているのだと思います。
TK:
あなたの最初のコレクション「Greenwood」について教えてください。
AB:
これは今でも特に好きなコレクションです。この作品はすべてのことが起こる環境=森を表現しています。それは、作品の主人公たちが、生活する背景のようなものです。森は、寓話、ファンタジー、夢が集積した場所です。森で取れる、ベリー、キノコ、小枝、葉、花などの自然の要素を、すべて手吹きガラスで作っています。各アイテムは、それぞれ異なる自然物がくっついています。これらは、テーブルの上に想像上の森を作り出すのです。
TK:
次に挑戦してみたいモチーフについて教えてください。
AB:
動物をモチーフに新作を作りたいです。森の中の小さな動物たちが、日用品の周りで穏やかに踊っている様子を想像して絵を描きました。動物だけが知っている不思議な儀式のようなダンスをモチーフにしてみたいです。