イェンニに聞く。
2023年8月、作品展「渋谷区猿楽町、王様のいない森。」を控えたイェンニ・トゥオミネンにインタビューした。
それからの森
今も森に行っていますか。昨日、森にキノコを採りに行ったところ。カゴ一杯のデリカータとシャントレルを見つけたわ。森を歩いてキノコを探したり見つけたりするのが好きなの。今日はブルーベリーを摘みに行ってブルーベリーパイを焼くつもり。冬に備えて冷凍にもする。そこには楽しさと便利さのミックスがあるのよ。
森の中はどんな感じ?
森の中は平和で安らげる。森の中で音を聞くのが好き。鳥のさえずりや木々のハミングを聞くの。五感の全てが敏感になる気がする。目が覚める。私は聴覚が鋭いので、耳を澄ます。周りで何が起こっているのか。森の中の音の風景は都会のそれとは違う。平和で、最初は静かに感じる。しばらくすると森そのものの音が聞こえ始める。木々や風の音。動物の鳴き声も。私は森に行くのが好き。そこには平和しかない。何かつらいことがあったら森に行く。落ち着くために。
この1年、どのように過ごしましたか。
今年はかなりたくさん仕事をしたわ。面白いプロジェクトや楽しいプロジェクト。時にはまとまった休みを取って新しい作品を作ることもあったし、コテージでリラックスする時間もあった。
その中で気づいたことは。
毎年まったく違うし、比べることはできないけど、私は幸せだということ。健康でいられること、そしてアートを創る意欲が湧いてくることに感謝している。
この1年で何か不思議な経験はありましたか?
1年前、iPadが壊れたの。デジタルのデバイスに依存するようになったかな、と思ったら壊れた。私はスマートフォンを持っていなくて、古いノキアの携帯電話を持っているんだけど、インターネットにはアクセスできない。多くの人がそれを不思議だと思っているんだけどね。
王様のいない森
森の妖精たちは変わりましたか。
まったく変わりました(笑)。
今回の展示ではちょっとミステリアスで大胆な登場人物を作りました。あまりかわいらしい子ばかりにしたくなかったんです。これらの作品は見る人にもっと疑問やアイデアを与えてくれるような気がします。
私はユーゲントスタイル(ユーゲント・シュティール (Jugendstil) は、1896年に刊行された雑誌『ユーゲント』に代表されるドイツ語圏の世紀末美術の傾向を指す)と北欧の民話からインスピレーションを得ました。その中で特に興味を持ったのは、小枝を持ったおばあさんです。いつか私もそんな作品を作るかもしれない。
あなたの森の妖精たちは何を望んでいますか。
私の森の妖精たちは、大胆で独創的でありたいと思っている。彼女たちは自分の意志を持っている。でも優しくて親切なの。
今回の作品展は、あなたにとってどのような意味を持っていますか。
大胆な登場人物を作りたかったんです。特に「バタフライガールズ」は私のアートの中で新しいキャラクターでした。私は古い動物図鑑や植物図鑑、田園風景に強く心を動かされていました。
作品との関係は変わりましたか。
作品に個性が増したということ。かわいらしさもいいけれど、作品自体への興味を持続させるためには、もっと工夫が必要なこともある。
作品はどの程度あなた自身になるのですか。
時々、作品の中に自分を見ることがあります。特にぽっちゃりした粘土の女性像は自分を思い出させる。私はヴィレンドルフのヴィーナス(1909年にオーストリアで発見された旧石器時代の女性裸像)のように原始的なものに魅力を感じるの。
「王様のいない森」はどんな森でしょうか。
いろんな生き物が平和に暮らしている想像上の森です。お互いを思いやりながら。みんなが仲良く暮らしていて、争いのないところ。
その森で、あなたはどんな役割を果たしますか。
魔法使いか人々を癒す人になるわ。素晴らしい魔法を使う子供になりたい。賢くなって、森に住む人たちに良いアドバイスをするの。私の持っている癒しの力で困っている人を助けるの。
夢、自由、子供、真実。
最近見た夢について教えてください。
どこか高いところにいる夢を見たことがある。高いところにいて、怖かった。高いところは好きじゃない。そういう場所は刺激的すぎる。
繰り返し見る夢はありますか。
大きなデパートにいる夢。デパートの一階に美術館があって、大きな彫刻がある。私は手すりにつかまりながら、それを上から見下ろしている。どうして夢の中でこんなに豊かな想像ができるのだろう、と思うことがある。まるで映画のようで、細かいディテールがたくさんある。時々、夢日記を書くべきだと思う。記録するのは楽しいと思う。
どんな時に現実を生きていると感じますか。
日常的なことで地に足が着いているとき、生きていることを実感する。
どんな時に自由を感じますか。
粘土で形を作っているとき。他のことを考えず、そのプロセスに集中しているとき。あとは湖で泳いだり、サウナに入ったりする時も同じ感覚がするわ。
子供の頃のことで、繰り返し思い出すことはありますか。
子供の頃のことはたくさん思い出す。母とキノコを食べに行ったこと、スウェーデン南部の長い砂浜やケシ畑、ポピー畑、よくコペンハーゲンに行ったこと、巨大な綿菓子の木があったこと。
歳をとるにつれて楽になることは。
歳をとるにつれて賢くなるし、経験も増える。年寄りには共感できるわ。彼らの中には人生の痕跡がある。私は一生健康で、作品を作り続けたい。それが夫のユッカの次に大切なものだから。私たちは一緒に幸せな老後を過ごしたい。
真実とは何ですか。
人々にもっと真正面から他人の言葉を聞いてほしいの。嘘をついたり歪曲したりせず、もっと多くの人に、ありのままを話すことが大切だと思うの。歪曲しないことが真実だと思うの。
おすすめ、希望、駆け抜ける鹿。
あなたがフィンランドを訪れる人にぜひ勧めたい場所はどこですか。
私の故郷ポルヴォーをお勧めします。ヘルシンキから近いし、観光するには最高の場所です。
ヘルシンキからも行きやすいしね。もし私がポルヴォーにお客さんを招待するとしたら、こんなコースになるわ。まず、私が「おとぎ話の森」と呼んでいるシコサーレで森林浴。その後、どこか素敵なレストランに夕食を食べに行ってから、最後はテルヴァヤルヴィ湖で泳ぐ。
最近笑ったエピソードを教えてください。
夫のユッカは面白い人です。毎日私を笑わせてくれるし、ジョークも言う。また、私は毎日動物のビデオを見て笑っています。
あなたの好きな言葉は何ですか?
好きな言葉は「ありがとう」。ありがとうと言うことは大切だと思うし、他の人もそうだと思う。他人への思いやり。時々、人はありがとうと言うことを忘れるような気がする。誰かに感謝されるとそれは私にとっても気持ちのいいことになる。自分が何かで成功したような気分になる。それが何かを生むんだと思うわ。
お気に入りの映画について教えてください。
冒険映画やSF映画が好きです。たぶん一番好きなのは面白い雰囲気の映画。ジャック・タチの映画はユーモアやコメディがあります。テレビ番組もよく見ます。エルキュール・ポワロが一番特別かな。何度見ても飽きない。私が知っている中で私が知っている中で最高の番組です。寝る前によく見るんだ。ミス・マープルも好きです。シャーロック・ホームズ、ジーヴスとウースター、そしてフォルティ・タワーズ。イギリスのユーモアが大好きなの。
もし映画を撮るとしたら、どんな作品にしますか。
歴史ものか、未来が舞台のものかな。女性が主役の冒険映画。
前回、夏休みの過ごし方を聞いたとき、あなたはこう言った: 「そうですね。ガーデニングとフリーマーケットと水泳が好きです。毎日2回泳いでいます。自転車に乗ったり、アイスクリームを食べたりもします」。まるで子供の夏休みのよう。あなたは今でも同じように夏を過ごしていますか。
今年の夏は仕事が多くて、あまりコテージにいることができなかった。来年の夏はそうやって過ごしたいわ。フィンランドの夏は短いから、おもいっきり楽しみたいんの。今はスイミングに通っているわ。お気に入りの場所はテルヴァヤルヴィという家の近くにある小さな湖です。今でも蚤の市に行きます。まるで宝探しみたい。イチゴも好きで、この夏はイチゴとエンドウ豆をよく食べました。フィンランドのベリーは世界一だと言われているのよ。
今興味や関心を持っていることについて教えてください。
大変だけど、庭の手入れをするのが好き。今年の夏は新しい栽培ボックスを作って、たくさんの花を植えたの。植物の成長を見守るのも楽しいわ。秋には自分で育てた野菜やベリーを食べることもできるし。
私が一番心配しているのは気候変動のこと。人々が気候変動の影響を受けることなく、アウトドアを楽しんでほしい。私は人や動物や自然が苦しむのを見るのが悲しいんです。
フィンランドは森林の国だと言われているけど、そうとは言い切れない。ここではたくさん森林伐採が行われていて、古い森林でさえほとんど残っていない。人々は気候変動を真剣に受け止めず、否定しているのではないかと思うことがある。私は、世界レベルで自然を保護し、後世にチャンスを与えなきゃいけないと思うの。
とっておきのエピソードを教えてください。
去年の秋、森でキノコを採っていたら、隣でガサッという大きな音が聞こえた。あまりに近くから聞こえてびっくりしたら、その瞬間、鹿が私の真横を駆け抜けていったの。鹿も私もとっても驚いたの。でも、その瞬間といったら、美しすぎて、まるで魔法のような夢のような瞬間だった。
「渋谷区猿楽町、王様のいない森。」
イェンニ・トゥオミネン
◯作家名: Jenni Tuominen(イェンニ・トゥオミネン)
◯会期: 2023年8月25日(金)-10月15日(日)
※土日祝のご予約は不要です。水・木・金はウェブから事前予約が必要です。
こちらからご予約ください。
◯開廊時間:12時-19時(祝祭日は開廊)
◯休廊日: 月・火
◯会場: のこぎり
〒150-0033東京都渋谷区猿楽町5-17第一西尾ビル2階
Tel:03-6712-7878
nokogiri@tonkachi.co.jp