マリアンヌはここ

作品展「I AM HERE」を控えたマリアンヌ・ハルバーグと話した。


マリアンヌの紋章

T

今回の作品は、前より更に、あなたの身近に転がっているモノを集めてきたって感じがしました。


M

そうね。そうかも。


T

今回も花があります。でもこれまでと少し違って、紋章とか皇室を思い浮かべるような佇まいです。


M

そう。王家の紋章とか、そ~いうことをずっと調べてきたの。


T

つまり、それを意識していたんですね。


M

それぞれの文化で花の捉え方はそれぞれなんだけど、そこにはいつも花があるのよ。そして世界中にある「柄」というのは、ほとんどが花柄でしょ。


T

つまりあなたは今回、ありとあらゆる花のミクスチャーによって、マリアンヌ女王陛下の紋章を作ったということですね。


M

そうかしら。私は今回、可愛すぎない、オーバー・キュートにならない、と心して挑んだの。全てはバランスなのよ。だから、ここにはドクロもいるの。かわいいドクロだけどね。


クリエイティブの本質


T

今回の作品はすごく禁欲的に感じるんだけど何故でしょう。


M

そう?忙しかったからかしら。


T

なんか欲望を抑えている、静かな感じがしました。


M

そ~ね~、今回は簡単ではなかったの。簡単に作れなかったのよ。いろいろな障害があったの。作品づくりは簡単な時と難しい時があるけど、今回は難しい時に突入していたの。人生いろいろあるから。


T

なかなか進展しなかったと。


M

私は新しいことを考えるのが好きで、同じものをずっと作っていく人じゃないの。自分はあんなこともできる、こんなこともできるっていうのが好きなのね。そ~いうのはスルッとできるときもあるんだけれど、今回はよくよく頭を使って考えないとダメだったわ。もう、すっからかんなのに何かを作らないといけないときだってあるのよ。


T

それは時が解決するの?


M

そうね、そういう時は何日も白紙1枚の前にずっと座ってるのよ。ずっとずっと座り続ける。それがクリエイティビティの本質なのよ。


T

それを季節が過ぎるみたいにやり過ごしていかないとクリエイティビティの継続はできないってことですね。


M

そう、ず~っと、ず~っと、ず~っと、ず~っと、考えていくの。


たどりついた机と椅子

T

作る時はいつもスケッチを描くんですよね。


M

そう。今回は、この机と椅子のスケッチが出来たことで、求めている新しいモノを掴んだの。線だけで構成された、もっともシンプルなカタチ。これが出来たことが最も大きな成果だった。


T

やっとそこに辿り着いたと。


M

いつもいつもこんな感じに仕事している。初めて今回の作品展を見た人は、いつもと少し違うって思うでしょう。でも、しばらくして、あ~、こ~いうことだったのかってわかる。そういうもんよ。


T

この机と椅子は誰もいないけれど、誰かの存在を感じますね。EmptyだけどEmptyじゃない。


M

私は、このEmpy感を気に入っているわ。


T

今回の展示は、最初、花から作りましたよね。


M

そう、花柄が好きなのよ。私が持ってるものは何でも花柄だし。あと海ね。花と同じくらい海が好き。私はキッチンに座って花や海の夢を見ている。


花はレントゲンなのか?


T

あなたは花から色以外を抜き出してくる。


M

私は色が好きすぎて、それがノイズになっちゃったの。それで色をやめたの。


T

あなたは花が好きで色が好きで、色のない花を作る。とっても面白いよね。あなたは色のない花が美しいと思ってもいないのに。


M

私は現実の花に対して同じ場所で戦う気はないってことね。花は偉大すぎるのよ。


T

花から色をとるように、あなたは家具から奥行きをとる。それは物のレントゲンのような、全く同じ試みなんでしょうか。


M

花だけは違うの。花だけは新しい角度とか描き方とか、様々な方法を試しているの。


T

花はレントゲンじゃない。


M

そうね。


T

レントゲンの中にレントゲンじゃないものが混じるので、人は感情を動かされるのでしょうか。


M

とにかくミックスするのが好きだからね。


アー・ユー・ノーマル?


T

展覧会のタイトル候補だったWhat’s going onという言葉について


M

今世界でいろいろおきている。世界中が爆発しそうに感じるの。環境も限界がきているし、酷い戦争も起きてるし。そこで私は「調子はど~だい?」って聞きたいの。


T

今回のもう1つの言葉であるDon’t Worryも、あなたの生涯のテーマであるBe Kindも、全て溶け合っていますね。


M

ここにある「I AM NORMAL」は私が初めて作った言葉のプレートなの。もう15年も前。


T

その心は?


M

私はみんなにアブノーマルだって言われてきたから、そうかしら?私こそ普通よ!あなたたちが変なのよ!って言いたくて、そうやって自分の人生の舵取りをしたの。


T

15年経ってどうですか?I AM NORMALからWhat’s going onやDon’t Worryはかなり開きがあるけど、それは成長ってことでしょうか?


M

そうならいいけどね。私の中では一直線なの。

私はこの言葉のプレートを何百枚と作ってきたけど、このプレートだけで会話が出来るようになったらいいって思うの。


T

何の模様もない花瓶もありますね。


M

これにはとっても大きな美しい花を生けてください。紫陽花とかいいわね。家に帰ってきて目に見えるところにすぐにあるのがいい花瓶です。花瓶は花が入ってから完成するから。

 

ドクロのセラピー


T

ドクロについて話してください。


M

私は小さなときから怖い絵があって、女の人なんだけどドクロが見えるの。今は5歳の孫が怖がっているわ。私の全ての恐れがここにつまっているの。


T

その割にはかわいいドクロですよね。


M

それが私の恐れに対する対処の仕方なの。


T

自分に対するセラピーですね。


M

そう。貧乏人のセラピーね。


T

あなたの作品は人々の心を落ち着かせて平和にさせるっていう部分があります。アートフェアで見ているお客さんもそう。初めて見る人が多いけど、あなたの作品を見て、初めて見たような気分にはならないで、自分勝手に楽しんでいる。


M

私の作品は漫画みたいに見れるから。誰にでもわかる。


T

それは他のアーチストでは得られない感覚ですよ。どのようにでも自由に感じて楽しんで、足元に気をつけてお帰りくださいっていう感じ。迎え入れて送り出す。そ~いうメッセージをあなたの作品を通して、私たち出展者は伝えることができて、見る人もそのメッセージによって楽になっている。マリアンヌ作品は誰もがなにか好きなとこを見つけて帰るんですよ。


M

まあ、そうだと嬉しいわ。今回もそうだといいわね。





私はここ/ I AM HERE
Marianne Hallberg(マリアンヌ・ハルバーグ)
会期:2023年10月20日(金)-12月10日(日)
※土日祝のご予約は不要です。水・木・金はウェブから事前予約が必要です。こちらからご予約ください。
開廊時間: 12時-19時y
休廊日: 月・火 (祝祭日は開廊)

会場:のこぎり
〒150-0033東京都渋谷区猿楽町5-17第一西尾ビル2階
nokogiri@tonkachi.co.jp​

 

 

Marianne hallberg