レスター・バングス(Lester Bangs)
伝説のロック評論家、その言葉と生涯
わずか33歳で生涯を閉じた、伝説のロック評論家の評伝!
日本初の書籍化。
【この本について】
音楽について語ることが、表現し行動することであった激動的な1970年代。その真っ只中を生きて死んだ、伝説のロック評論家レスター・バングスの評伝、日本初書籍化。一人の、これ以上ないほどにクチの悪い男が「文学としてのロックンロール / ロックンロールとしての文学」を作り出すまで!
「レスター・バングス 伝説のロック評論家、その言葉と生涯(原題:LET IT BLURT)」は、抑圧された子供時代からロック批評家として頭角を表し突然の死に至るまで、伝説の男の人生を丹念に追った記録である。翻訳は無理とも言われるその独特の表現、比類なき音楽への情熱、攻撃的なのに泣けてくる、どうしようもないほどに切ない魅力が明らかにされる。
没後40年以上が経過した今も、レスター・バングスは本気で音楽と対峙した傷だらけのヒーローとして、人々の記憶に残り続けている。その言葉に触れたものは、本当の音楽、本当の文学、本当の青春に触れたように、それ以前とは何かが全く変わってしまうのだ。
「パンクロック」や「ヘヴィメタル」を定義し、絶賛するにも酷評するにも、同じだけの愛と憎しみを注いだ、あり得ないロック評論家。英語圏においては、彼の評論スタイルは1つの到達点として認識されているが、日本ではこれまで書籍の出版がなく、ほとんど知られてこなかった。本書はその空隙を埋める最初のものである。版元では引き続きレスター・バングス自身の評論集も刊行予定である。
【目次】
はじめに PREFACE
イントロダクション INTRODUTION
第1章 閉ざされた円環 THE CLOSED CIRCLE
第2章 クールの誕生 BIRTH OF THE COOL
第3章 ドラッグ・パンク DRUG PUNK
第4章 運命の分かれ道 MAKE IT OR BREAK IT
第5章 ボーイ・ハウディ! BOY HOWDY!
第6章 75年まで生き延びろ STAY ALIVE ’TILL ’75
第7章 彼女が俺を呼んでいる I HEARD HER CALL MY NAME
第8章 テンダー・ヴィトゥル TENDER VITTLES
第9章 まだ中に誰がいる THERE’S A MAN IN THERE
第10章 ブラゾスあたりのジューク・サヴェージ JOOK SAVAGE ON THE BRAZOS
第11章 世捨て人らに囲まれて ALL MY FRIENDS ARE HERMITS
第12章 そのドアは開けるな IGNORE THAT DOOR
後日譚 AFTERWORD
謝辞 Acknowledgements
付録Ⅰ きみもロック評論家になろうーレスターバングス究極の教え
AppendixⅠ How To Be A Rock Critic:A Megatonic Journey With Lester Bangs
付録Ⅱ レスターバングス詞選
AppendixⅡ Selected Lyrics By Lester Bangs
【レスター・バングスについて】
レスターのキャリアは大学時代、雑誌「ローリングストーン」の読者によるアルバムレビューを募集する企画に応募したことから始まった。独学で築いた荒々しい言葉遣いと極めて鋭利な文章は人気を集め、ローリングストーンでニッチな地位を確立した。1973年「ミュージシャンを侮辱した」という理由で解雇されるまで、ローリングストーンで執筆を続けた。
その後、寄稿した雑誌「Creem」でも、騒々しく急進的な批評は止まらなかった。ある時は、アメリカのロックバンド、J・ガイルス・バンドのコンサート中に、タイプライターを手にステージに上がり、聴衆に見られながらリズムに合わせてキーを叩き批評でライブした。Fusion、Playboy、Penthouse、New Musical Express、Phonograph Record Magazine、Village Voiceなどさまざまな出版物に寄稿する。1982年、ドラッグの過剰摂取が原因で33歳という若さで生涯を閉じた。
2000年には映画「あの頃ペニー・レインと」で今は亡きフィリップ・シーモア・ホフマンがレスター・バングス役を演じた。ニューヨークパンクを代表するバンド ラモーンズや、世界で最も重要なバンドとも評されるREMのマイケル・スタイプは愛情を込めて曲中で彼の名前を歌い、作家デヴィッド・フォスター・ウォレスは、初の共著『シグニファイング・ラッパーズ』をレスターに捧げた。ニューヨーク・パブリック・シアターの公演「How to be a Rock Critic(ロック批評家になる方法)」の元となったのが本書である。
【ジム・デロガティス(著者)について】
1964年生まれ。アメリカの音楽評論家、ジャーナリスト、大学の准教授。世界で唯一のロックンロールトークショーであるラジオ『サウンド・オピニオン』の共同司会者。シカゴ・サンタイムズ紙でポップ・ミュージック評論家として 15年間寄稿した。
彼自身ドラマーであり、80年代初頭から数々のインディー・ロック・バンドに在籍してきた。現在のパンクトリオ、ヴォルティスは2000年から活動しており、最近7枚目のアルバム『This Machine Kills Fascists』をリリースした(Cavetone Recordsからレコードで発売中、Spotifyでストリーミングも可能)。彼もレスター同様、ローリング・ストーン誌 在職中に、否定的な批評を書いたために解雇されている。
ジャーナリスト志望だった高校生の時、「自分のヒーローにインタビューしてくる」という課題で彼がインタビュー相手に選んだのがレスターだった。「優れたロックンロールとは何か?」という高校生の質問に、レスターはしばし黙り込んだあとで、「それはロックでなくても、映画でも、文章でもいいんだ。物事に対する向き合い方なんだ。人生を貫くための方法なんだ」と答える。そして高校生が差し出した値引きシールがそのまま貼られた自著に、まだ売れ残ってたんだな、といいながらサインする。「ジムへ 次はお前の番だ。頑張れ。レスター」これが本書執筆のきっかけとなる。レスターが亡くなる2週間前のことだった。
【読者のみなさまへ】
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