瀬戸焼のリサ猫が出来るまで
八番、瀬戸、岩の月

今回、「にっぽんのリサ猫(八番、瀬戸)岩の月」を制作したのは、愛知県瀬戸市の窯元・かしわ窯。瀬戸焼の伝統の中にありながら、独自の方法を追い求め続けてきた窯元だ。

かしわ窯のはじまりは1960年代。
創業者・岩附壽之が陶芸家を志し、愛知県岡崎市から瀬戸市へ移り住んだことから始まった。

当時の瀬戸では、白い陶器の量産が主流だった。
その中で壽之は、あえて量産とは距離を置き、動物や植物など、暮らしの中でふと心が和らぐモチーフを作る道を選んだ。

同じ志を持つ仲間と瀬戸クラフト協会を立ち上げ、各地での展示や海外との交流も積極的に行ってきた。
北欧デザインからも強い影響を受けながら、試行錯誤を重ね、赤土と独自の釉薬による表現を完成させていった。

歪み、焦げ、色むら。
まるで何世代もの時を経たかのような、エイジングした風合い。
それが、かしわ窯の大きな特徴だ。

我々は、最初から、今回の八番目の取り組みは、窯元の個性とリサの個性が、真剣勝負でぶつかり合う大荒れの一番になりそうな気がしていた。

時間を味方にする

かしわ窯が、最も大切にしているのは、「何世代にもわたって、長く愛され続けること」。

流行に左右されず、十年、二十年先の暮らしの中でも、当たり前のようにそこに在り続けるものを作りたい。

焼成によって生まれる焦げや色むらは、狙って完全にコントロールできるものではない。
だからこそ、ひとつひとつに違いが生まれ、時間とともに表情を深めていく。

今回のリサ猫でも、その“かしわ窯らしさ”は、はっきりと現れている。

オリジナルより、もっと

各窯元の個性を出すのが「にっぽんのリサ猫」だと聞き、完成形を想像するのが楽しみで仕方なかったと、かしわ窯のIさんは語る。

制作で最も意識したのは、「オリジナルにはない良さ」をどう表現するか。

「オリジナルに忠実に」という考えに囚われず、オリジナルを越えようとした。
リサ猫であること。そして同時に、かしわ窯であること。
その二つが、二つの月の様に、並び立つべきだ。

これでいいのだ!

制作で最も難しかったのは、顔の表情づくりだった。

試したいことが多すぎて、方向性を見失ってしまうこともあった。
試作を重ねる中で、手が止まってしまうこともあった。

そんなとき、トンカチのYが工房を訪れ、直接言葉を交わしたことで、目指すリサ猫のイメージが一気に定まったという。

これを聞いて驚いたのは、こっちだ!
何気なく陣中見舞い的に、いや、興味本位で立ち寄った訪問が、方向性を決める決定打になったと言うのだ。

きっかけなんて、どこから生まれるかは分からない。
分からないから、この猫があって、分からないから、ものづくりは楽しいのだ。
思えば、このリサ猫プロジェクトは、わからないことだらけでスタートし、今もわからない道を進み、これからも、きっとわからない。
これでいいのだ。

岩の月という猫

使用しているのは、先代が試行錯誤の末に完成させた、オリジナルブレンドの赤土と釉薬。今回のリサ猫では、顔が凹むのではなく、ふくらむように、石膏型を彫り直した。
何度試作しても思うように表情が出ない中で、「焦げ」を、顔の表情に生かすことを決めた。
焼成の力を受け入れることで、ようやく納得のいく仕上がりに辿り着いた。

君を待ってたんだ

私たちにとっても、長い道のりだった。
めげることなく、試作を作り続けてくれる窯元さんに、申し訳なくなったりもした。
けれど、完成した猫は、そのすべてを癒してくれた。
箱から出てきた瞬間、「君、待ってたよ!」
やっと来てくれたという思いだった。
Iさんは、一年半かかったが、妥協せずに続けてよかったと言ってくれた。
私たちはIさんの名前とかけて、このリサ猫を「岩の月」と名付けた。

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"Lisa's Cats On the Road"
「にっぽんのリサ猫」の旅は、これからも続きます。乞うご期待!

Lisa larson