2024年6月、日本での2回目の作品展「どうして僕はこんなところに」を前にマリーナにインタビューした。

T=トンカチ
M=マリーナ・ル・ギャル


T
あなたは以前のインタビューで「絵を描くときは彫刻から一歩さがり、彫刻をするときは絵のことを考える」と言ってました。今でもそうですか。それに付け加えて言うことはありませんか。


M
私のアトリエはL字型に作られていて、一方に絵画のコーナーが、もう一方に彫刻のコーナーがあります。私の絵画はしばしば大きいため、全体の構図を確かめるために離れて見る必要があります。その時に彫刻が目に入ります。いつもは午前中に彫刻、午後に絵画に取り掛かります。しかし、絵を描いている最中に彫刻を見つけると、新しいアイデアが浮かんだり、すぐに修正が必要な欠点を発見したりすることがよくあります。また、彫刻の色は、その時に描いている絵の色に影響されています。


T
絵を描くあなたは静かな観察者のようです。それはまるでドローン、あるいは動物型アンドロイドが撮影した写真のように、感情が介在しない客観的な映像に見えます。けれど彫刻作るあなたは行動的で感情に溢れているように見えます。この感想についてあなたの意見を聞かせてください。


M
私の画家としてのビジョンは、ほぼ自然主義者のそれと同じです。モチーフに比較的忠実です。とはいえ、絵画は一つの視点を表しています。自然や動物界への愛情が焦点です。彫刻の仕事は人間に向けられています。多くの場合、それは社会についてです。私の彫刻は小さな物語を語っていて、それは寓話や風刺画のようです。動物がある場面に登場して、観客がその存在を認識すること。それが私にとっては重要であり、残りは解釈と物語の続きなのです。


T
絵は具体的で、彫刻はより抽象的にも見えます。あなたにとって具体性と抽象性というのはどんな意味があるのでしょうか。


M
具体的なものは触れることができ、しばしば普遍的であり、多くの人に同じことを語ります。一方、抽象的なものは解釈に委ねられます。抽象的な作品では観客が果たす役割があります。観客自身が物語の一部を自ら語るのです。


T
自然を描くことの面白さ、描くことであなたの内面はどう変化していくのか教えてください。


M
自然、動物、植物は優雅です。形は曲線や装飾性に満ちています。これを描くことは私の喜びです。自然は私にひじょうに心地よい自由な構図を与えてくれます。自然を描くことは私にとって、あまりに現代的です。それは時代を超えた世界の証言だと言えます。風景は単なる自然に覆いかぶさる装飾を超えて私のテーマとなります。私は木の肖像画を描きます。動物たちが前景で行動しているところを捉えます。それらを描くことは誰にも迷惑をかけずに波乱万丈な大冒険をするようなことなのです。


T
私たちの依頼で山火事の中の狼を描いてもらいました。この絵について何か教えてください。


M
私は火を描くのが大好きです。2020年春の最初のロックダウン中に、小さく燃えている森を描きました。火はいつも私を魅了してきました。私にとって火は白鳥の歌のようです。それは美の儚さを表しながら、美をさらに引き立てます。狼については、ついにギャラリーがそれを描く機会を与えてくれました。


T
あなたの近況について教えて下さい。子どもたちはどのように変化しましたか。あなたの毎日や創作はそれによりどんな変化がありましたか。


M
最初の息子、カエリグは5歳半です。彼はアトリエで多くの時間を過ごします。私は彼と作品について話すことが大好きで、彼の作品解釈が大好きです。定期的に彼は提案をくれますが、そのアイデアがますます賢くなっています。彼は彫刻がどんどん上手くなり、絵もますますリアルになっていて、たくさんの物語を語ります。家では、彼専用の展示用の壁があり、本棚の一段は彼の彫刻展示の場になっています。彼は定期的に学校の先生に作品を寄贈しています。

二番目の息子、エローンは2歳半です。彼は最近アトリエに来るようになって、いつも私のそばで作業したがります。3週間前、私はウサギの模型を作っていました。彼に粘土を少し切り分けて渡し、彼の隣には乾燥中のもう一つの粘土のウサギがありました。私はエローンにできるだけ自由にさせながら、定期的に彼に目を向けていました。私の彫刻が形になってきたころ、ふと気づくと、エローンが小さな粘土の輪を作って乾燥中のウサギに貼り付けて、それがウサギの目になったのです。すごい瞬間でした!

2年前にパリから80キロ離れた場所に引っ越しました。今は森に囲まれた田舎に住んでいます。毎日多くの動物と出会える豊かな環境にいることで、私の仕事は落ち着き、効率が上がり、アイデアもより優れ、より確立されつつあります。新しい環境の孤独を楽しむことで、より大きな創造的自由を得ています。

 

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インタビュー「マリーナとの対話。」はこちら

 

Marina le gall