MAINLINES,
BLOOD FEASTS,
AND BAD TASTE—A LESTER BANGS READER
メインラインズ、
ブラッド・フィースツ・
アンド・バッド・テイスト
レスター・バングス著作集
伝説のロック評論家レスター・バングス著作集(アンソロジー)第2弾、初邦訳。ロックと共に70年代を駆け抜けた言葉の音楽。親友ジョン・モースランドが未収録の文章から厳選。10代の原稿から旅行記まで、電撃的ひらめき、逸脱と妄想、変節と情熱が詰まった一冊。
評伝『レスター・バングス 伝説のロック評論家、その言葉と生涯』(2024年)、第一著作集『サイコティック・リアクションズ・アンド・キャブレター・ダング』(2025年)に続く、トンカチブックスによるレスター関連書籍第3弾!
Editor
John Morthland(編者)
ジョン・モースランド
アメリカのロック/カントリー批評を代表する音楽ジャーナリスト。1964年、17歳のときにローリング・ストーンズの初来米公演でインタビューを行い、批評家としてのキャリアをスタート。Rolling Stone 誌、Creem 誌などの編集スタッフを経て、フリーランスとして Texas Monthly 誌のコントリビューティングエディターを長年務めた。著書に The Best of Country Music、編著に今回のレスター・バングスの評論集 Main Lines, Blood Feasts, and Bad Taste: A Lester Bangs Reader がある。2017年没、享年68歳。
CONTENTS
目次
まえがきと謝辞から、ドラッグ・パンク、誇大宣伝と英雄詩、殿堂、旅行記、そして教授の覚書まで。 レスター・バングスの多彩な声が、576ページに収まっています。
まえがきと謝辞
Introduction and Acknowledgments
ドラッグ・パンク
Drug Punk
誇大宣伝と英雄詩
Hypes and Heroics
殿堂
Pantheon
旅行記
Travelogues
妄言、憤怒とリバップ
Raving, Raging, and Rebop
教授の覚書
A Professor's Notes
デザイナー
重実生哉
しげざね・いくや
1979年生まれ。グラフィックデザイナー。筑波大学芸術専門学群卒。 モリサキデザインなどを経て2006年独立。 書籍のデザインを中心にグラフィックデザインを手がける。高知県在住。
https://shigezane.com/© 1987 by The Estate of Lester Bangs
© 1987 by Greil Marcus
Japanese translation rights arranged with The Estate of Lester Bangs
c/o Raines & Raines, Millbrook, New York through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo
© TONKACHI,Ltd.
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翻訳者・編集者・企画者それぞれの視点から。
東京外国語大学英米語学科卒業。出版社勤務をへて翻訳業に。
訳に「フィル・スペクター 甦る伝説」「ザ・ビートルズ・サウンド最後の真実」「ニール・ヤング自伝』(以上、白夜書房)、「ビル・グレアム ロックを創った男」(大栄出版)、「トッド・ラングレンのスタジオ黄金時代』(スペースシャワーネットワーク)、「ハリー・ニルソンの肖像」(国書刊行会)、「バート・バカラック自伝』(シンコーミュージック)、「ルー・リード伝」(亜紀書房)、『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』『ボール・サイモン 音楽と人生を語る』「ビートルズ”66』(以上、DUBOOKS)ほかがある。
2冊目なので少しは楽になるかと思ったら……全然そんなことはない!
2冊目なので少しは内容が薄れるかと思ったら……全然そんなことはない!
レスターは相変わらずパワー全開です。
東京外国語大学英米語学科卒業。出版社勤務をへて翻訳業に。
訳に「フィル・スペクター 甦る伝説」「ザ・ビートルズ・サウンド最後の真実」「ニール・ヤング自伝』(以上、白夜書房)、「ビル・グレアム ロックを創った男」(大栄出版)、「トッド・ラングレンのスタジオ黄金時代』(スペースシャワーネットワーク)、「ハリー・ニルソンの肖像」(国書刊行会)、「バート・バカラック自伝』(シンコーミュージック)、「ルー・リード伝」(亜紀書房)、『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』『ボール・サイモン 音楽と人生を語る』「ビートルズ”66』(以上、DUBOOKS)ほかがある。
大学在学中からインディーズ音楽レーベルで働き、朝日出版社を経て、現在はフリーで編集や執筆・取材をおこなう。
2012年に「アイデアインク」シリーズ(内沼晋太郎『本の逆襲』、佐久間裕美子『ヒップな生活革命』など)を立ち上げ、ほかに武田砂鉄『紋切型社会』、「本の未来を探す旅」シリーズ、九螺ささら『神様の住所』、『Chim↑Pom展:ハッピースプリング カタログ』などを編集。大阪・北加賀屋で開催のASIA BOOK MARKETの韓国出店者もコーディネートする。
「ロックは破天荒な音楽として誕生し、破天荒な評論によってその魅力を保っていたことを思い出させてくれる」。アメリカ文学・ポピュラー音楽研究者の佐藤良明さんがレスター・バングス著作集の前巻『サイコティック・リアクションズ・アンド・キャブレター・ダング』に投じてくださった言葉です(みすず書房『読書アンケート 2025』)。 「破天荒」の語義とされているのは(中国唐代の科挙にまつわる故事に由来して)「今まで誰もなしえなかったことをなすこと」ですが、「破」「荒」という字面からか、「豪快で荒々しく大胆」というイメージも重ねられる。
レスターの親友であり音楽評論家仲間のジョン・モースランドが編んだ今回の著作集第二弾『メインラインズ、ブラッド・フィースツ・アンド・バッド・テイスト』(前巻より100ページほど少ないけれどそれでも576ページ!)でそんな破天荒ぶりをいかんなく発揮しているのは、パート4「旅行記」に収められた「ジミ・ヘンドリックスとの最新独占インタビュー」でしょうか(メインタイトルは「死はきみのサンタクロースかもしれない」)。軽妙な言葉の応酬に引き込まれて、あれ、これってジミ・ヘンドリックスの死後5年以上経ってる?と気づいたときに、かの新興宗教教祖による数々の「霊言」よりも先を行っていたその破天荒ぶりに驚くことになります。
妄想と逸脱の波が絶え間なく押し寄せる即興音楽そのもののような文章は前巻と同様なのですが、今回の白眉は巻末解説でジム・デロガティス氏も述べるように(「ぼくの友達は旅に出ているときが最高だ、というモースランドの意見にはわたしも賛成だ。」)、旅の文章が多く含まれていることです。その旅先に “この世の向こう” まで含めているところが編者モースランドの粋でもあるのですが、ジャマイカ・キングストンでのボブ・マーリーをはじめとする音楽家たちと土地の活写、故郷カリフォルニアに戻り母や甥とも再会して膨らむ随想は、僕が特に好きなものです。
33歳で生涯を閉じたレスターがその後もっと、音楽以外のものごとについて書いたらどんなだったろう、読んでみたかったな思いつつも――たとえば現在の覇権主義的な政治的・文化的状況をめぐる断想、あるいは日本滞在記を――やっぱり音楽について書きながら自分について書き続けたようにも思います。それらを読むことは叶いませんが、破天荒と不適切が紙一重となり、「こんなこと書いていいんだろうか」となにかと自己ストッパーがかかるこの時代、「おまえはいったい何に怯んでるんだ?」と叱咤と勇気をもらいたいとき、そのたびごとに、レスターの文章にあたることでしょう。
今作も前作につづき達人的訳業を施してくださった訳者の奥田祐士さん、シリーズ三部作にこれ以上ない形と色を与えてくださったデザイナーの重実生哉さん、合計1700ページに及ぶ本文の赤字を丁寧に修正くださったDTPの濱井信作さん、1冊目の評伝『レスター・バングス』を翻訳して本シリーズにつなげてくださった訳者の田内万里夫さん、訳者お二人とのあいだで心強くサポートくださった翻訳会社リベルのみなさん、著作集2冊に懇切で熱い解説を寄せてくださった『レスター・バングス』著者のジム・デロガティスさん、そしてレスターへの愛情と時代への炯眼でもってこの稀有なプロジェクトを推進された大森秀樹さん、勝木悠香理さんはじめトンカチのみなさんに――こう言うのもなんですが、やはり言うとしたら――レスターに代わって、御礼をお伝えしたいと思います。あっちにいるジミ・ヘンドリックス=レスター・バングスは、どんな小さなことでも教えてほしいと、こう言ってましたから。
「だからあんたが向こうにもどってこれを記事にしたあと、誰かがあんたの前にあらわれ、その件に関するなんらかの情報があると言ってきたら、それがどんなに薄っぺらなものでもいいから、こっちにもまわしてほしいし、そしたらあんたはオレの死に、最高に尽くしてくれたことになるだろう」
(本書「死はきみのサンタクロースかもしれない――ジミ・ヘンドリックスとの最新独占インタビュー」より)
大学在学中からインディーズ音楽レーベルで働き、朝日出版社を経て、現在はフリーで編集や執筆・取材をおこなう。
2012年に「アイデアインク」シリーズ(内沼晋太郎『本の逆襲』、佐久間裕美子『ヒップな生活革命』など)を立ち上げ、ほかに武田砂鉄『紋切型社会』、「本の未来を探す旅」シリーズ、九螺ささら『神様の住所』、『Chim↑Pom展:ハッピースプリング カタログ』などを編集。大阪・北加賀屋で開催のASIA BOOK MARKETの韓国出店者もコーディネートする。
音楽について話すことも好きだった。
ほとんどあらゆることを音楽に教えてもらい、ほとんどあらゆることを音楽からパクらせてもらった。音楽体験だけが、私の空想に敬意を払ってくれたし、お前は遅れているとケツを叩きながら、メロディーとリズムと音像で、俺たちの抱える本質的な不幸と不安を癒してくれた。
音楽には大いなる借りがある。一生かかっても返せない。
孫に(愛人に?)服を買ってやるなら、ステラ・マッカートニー以外はダメだ。同じ服なら、ポールの娘から買ってやるのが道理だ。ディランの娘が携帯屋さんなら常に無条件で最新モデルを買え。ルー・リードの娘が餃子屋ならそれを食え。ボブ・マーリーの娘が老人ホームをやってるなら今すぐそこに入れ。レスター・バングスの本が、何十年も邦訳されずにほったらかしになっているなら、そりゃあ出すだろう。音楽体験とは、こーいうアホな考え方に必ず行きつく。
レスターの本は、音楽体験が行きつく、もっともハードな極北への旅行記、とも言えるし、もっともアホな笑うしかない珍道中、マネしちゃいけない袋小路、とも言える。我々は、ああ、こんなことになっちまうんだ、恐ろしや~と遠巻きで見ていて、やがて気づく。この本には、音楽が本来持っている、あらゆる純真さ、はったり、あまったれ、情熱、慈しみ、苦しみ、ピース&ラブ、の全部がごちゃごちゃに散らかっている。整理整頓なんてさらさらする気がない。ここには、人間が自然音を真似て音楽なんてものを作ってしまって以来、取り返しがつかなくなってしまった混沌が、工場で加工される前の、生の言葉で散らかっている。
ひとつの音楽は、人心掌握のための権力の道具にもなるし、ナルシスティックな若者を金持ちか貧乏人にするだけだったりする。しかし、本当の個人が、見えない事が見えた気になって、この世界に対するいたたまれない思いを、いたたまれない念仏のように唱え、頼まれもしないのに行脚して、お前に出会い、旅に出ろよと歌うのを聞き、お前は、見えない事が見えた気になって、同じ道を行った先で、アンタに出会う。そ~いう結果だって作り出す。
レスターは音楽産業の最も後方にいるキーパーだった。観客席にはいないし、審判でもない(この業界には賄賂をもらったあまい審判がいっぱいいる)。奴がそこにいると必死に止めに来るのでシュートは入りにくい。でもミスも多くて、PKで簡単にやられちゃう。敵にとっても味方にとっても、やっかいだ。けれども、スタジアムのはるか上空で、おてんとさんは思っている。いつも、ヤツがそこにいて欲しい。
レスターの本を3冊も刊行できたのは、ひとえに、関わってくれた皆さんと、どこかできっと読んでくれるに違いないアナタ様のおかげです。ありがとう。
大森秀樹(PowerShovel,Ltd.)